今日本中はキャンプばやり、ファミリー層を中心に若者も含め大流行。キャンプ場は予約をしないと入れない状況だ。高速道路を走っていても,RV車にこれでもかというほどキャンプ道具を満載し、それでも積みきれない荷物を屋根にも積んでいる。車の中には必ず女性が乗っている。運転をしている人の奥さんか又ガールフレンドかも知れない。又ファミリーの場合は子供もいる。この様な車が週末の朝には高速道路で渋滞している。
中堅電機部品メーカー係長のAさん43歳、奥さんと9歳の長男と7歳の長女 一男一女の4人家族。 5年前に買った杉並の2LDKのマンションに住んでいるが、結構返済には苦しんでいる。
子供もそれぞれ小学校に通うようになり、道具も前に比べるとずいぶん多くなり部屋がやたらと狭くなってきた。 会社から帰っても自分のいる場所が毎年削られていくような気がする。
最近吹き荒れたリストラの嵐も何とかくぐり抜けたが、又いつか自分の身にも降りかぶってきそうな感じが払拭出来ないでいるのが現状だ。
そんな心配も家族には悟られないようにするのが父親としての義務だとも思っているくらいの良い親父なのだ。そんな彼にも、ほっとする事がある。それは家族と一緒に行くキャンプなのだ。季節になると月に一回は必ず行くようにしている。 今週は第二土曜なので子供たちも休みなのでその計画を仕事中に考えていた。結局、道志川にあるキャンプ場にいくことにした。そして今は持ていく物の点検を頭の中でしている。机を並べている同僚には、難しい仕事を考えているようにしか見えない。
土曜の朝は5時に起きた。金曜の夜は普通だと部下と一緒に飲みに行くのが恒例になっているが、キャンプの前の日は別だ。色々準備があるからだ。まず駅前のスパーで明日使う食料の買い込みがあるし、キャンプ道具の積み込み、今回は釣りもできそうなので、その支度もあった。釣りといっても今流行のフライフィシングではなく、子供たちを楽しませるだけの簡単な物なのだが、準備するのは以外と時間がかかった。
奥さんをまず起こし、朝食の支度をしてもらっている間に、自分はクーラーに氷を入れ、昨日買った食料の内、腐りそうな物だけその中に入れたりして、細々動いている。それから子供を起こし、食事を済ませ、やっと出発にこぎつけた。もう6時を回っていたが、自宅からは高速まで近いのでそれ程慌ててはいなかった。高速に乗ったとたん渋滞に巻き込まれた。こんなに早い時間でもシーズンなればしょうがないと、あきらめて回りの車を見回せば、我々みたいな様相をした車ばっかりだ。中には車の屋根まで溢れるばかりの荷物を積んでいるものさえ有る。
"ふと"、彼の脳裏をつい先日のニュースの画面がよぎった。中近東の内線で戦火を逃れるために避難する難民がオーバーラップした。違いと言えばその映像での車は薄汚れているが、今回りにいる車はぴかぴかに磨かれている、それだけの違いだ。
現地には予定時間よりかなり遅れたものの、無事到着した。さてこれから自分たちの大きな家とテーブルセット、キッチン、寝るためのベッド、それにタープを組み立てる事になる。隣でキャンプをしている人の張り綱に気を使いながら、やっとの事で完成した。ここはまさに自宅では味わえない大きな庭があるが、残念なことに塀のない隣家もある。 回りを見回しても、我々と同じようなスタイルだ。
又、彼の頭を先ほどよぎったものと同じものが浮かんできた。テント、鍋釜、ベッド、テーブル、雨避けタープ、・・・
これは難民だ。間違いなく難民だ。
我々は現実と言う戦火から逃れてきた難民なのだ。 |